
俺は大分から福岡へ向かってバイクを走らせている。現在3月16日午後3時半。ついさっきまではフェリーに乗っていた。一時間前には四国にいたのだ。フェリーの中には同じように九州への帰路につくハーレーのキャンプバイカー、ミーティング帰りのメグロSG。船内では楽しくお話させて頂いた。
九州に着き、知った地名や風景を眺めながら、この3日間を振り返った。何もかもが初めて体験する事ばかりだった。フェリーにバイクを載せる事、船中泊。全く知らない四国という土地。初めての3連休の旅。そして、一人旅。
今回は四国へ行ってきたお話しです。長くなりますが、お付き合い下さい。
3月13日(木)午後6時俺はこの日仕事を終わらせ、22時小倉港発松山行フェリーに乗るため、バイクを走らせる。天候は小雨。雨合羽を着て古賀インターから高速を使った。途中から雨は上がり曇り空。予報では明日も雨なので気は抜けない。土日は晴れの予報だったので今回の四国行きを決行した。
小倉で高速を降り、フェリー乗り場へ向かう。待合室には老夫婦、卒業旅行と思われる若いグループ、独り者、様々な人が出発までの時間をぼんやりと過ごしている。駐輪場にバイクは俺の他にもう一台HONDAシャドウ750だ。愛媛ナンバーのものだった。乗船時間になりバイクを載せる。係員は手馴れた様子でバイクを固定している。固定されたのを確認し、客室に移動する。今回は2等客室、大広間に雑魚寝のアレだ。
船内にはレストラン、大浴場等設備も充実、快適な船旅をどうぞ宜しくといわんばかりに色んなものがある。俺はレストランで食事をとり、ビールを飲みながら出港を待っていた。程なく船は走り出した。友人から借りたツーリングマップルを見ながら、ビール、タバコと気侭な時間を過ごす。
正直不安なのだ
初めて行く土地で右も左もわからず、いくらBMWとはいえ旧車であることは間違いない。勿論出発前にやれる事はやっておいた。が正直何が起こるかわからないというのも事実。しかも明日の天候は雨。まあもうフェリーに乗ってしまったし、半ばなんとかなるさという気持ちになってきた。酒の力を借りて。
眠くはないのだが23時には床につく。明日は朝5時に松山港に着くからだ。旅の朝は早い。
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空調の音とエンジン音がうるさい。そして隣のおっさんが寝返りをうつ度にうぎゃんと唸りやがる。寝れません。静かにすごしたいなら高い切符を買えという事か。寝ようと努力するが、時間はどんどん過ぎていく。おっさんは未だ唸っている。
3月14日(金)朝4時あと1時間で到着とのアナウンスで目を覚ます。いつのまにか寝ていたようだがおそらく3時間程度であろう。洗面所で顔を洗い、荷物の準備をしてから缶コーヒーとタバコで頭を覚ます。窓から外を眺めるとまだ夜明け前で真っ暗。天候は曇りのようだ。
朝5時松山観光港に到着。バイクのキックを踏み降ろしエンジンを目覚めさせる。最近は調子良くキック数発でかかってくれる。頼もしい奴だ。フェリーから降り、港で一度バイクを止めて地図を確認する。着いたのだ、四国へ。雨が振っていない事もあってか、気持ちは高揚している。
さあ行こうか

ひとまずの目的地は香川県琴平にある金刀比羅宮と讃岐うどん。そこからは成り行きで行こうと思い宿はとっていない。高速もできるだけ使いたくないのでまずは愛媛県松山から瀬戸内海沿いを通って香川を目指す。
早朝という事もあり、国道は車も少ない。快適に進んでいく。国道は道も広くきれいに整備されていてとても走りやすい。暫くいくと海沿いの196号線に出た。左手に瀬戸内海、見えないがその先に存在するであろう故郷の山口県を想像しながら走っていく。途中コンビニで休憩しながらのんびりと海沿いを走る。夜が明けたが太陽は見えない。今にも降り出しそうな曇り空で海にも山にも霧がかかっている。琴平に向かう途中、観音寺という所にある土を盛って作られた直径122メートルにも及ぶ巨大な寛永通宝が展望台から見えるとの事で行ってみた。少々道を間違えながらその展望台から寛永通宝を望むも霧が濃くてどうもはっきり見えない。残念だ。晴れた日に撮られていた写真はくっきりと見えていただけに少々がっかりしてしまった。まあこれも来た事に意義がある。楽しい寄り道だ。
正午琴平に到着。およそ6時間くらいかかったか。バイクを停めて徒歩で金刀比羅宮周辺の観光に向かう。観光地なだけにまずまずの人で賑わっている。

金刀比羅宮までは長い石段になっており、最高部まで登るには1300段くらいあるらしく往復するだけで1時間はかかるとの事だったのでその前に食事をとる事にする。

参道にあるこんぴらうどん。5種類くらいある食べ方のうちしょうゆでいただく。ゆであがった麺にねぎ、鰹節をのせちらっと醤油をかけるというシンプルなもの。まず麺の美味さに驚く。俺はグルメではないのでうまくは表現しないがとても美味しかった。香川にいるんだなと実感が湧いてくる。

腹ごしらえを済ませ、石段を登っていく。途中で迎えてくれたなんかポップなやつ。目が可愛い。

とりあえず目標に到着。お参りを済ませ、お守りを購入。幸せの黄色いお守り。自分の分は買ってないさ。本来この奥の石段を登りきった奥社という所までいくつもりだったが、ここで俺のベルスタッフに雫が落ちてくる。雨だ。遂に雨が降り出した。ここから降りて行く事にする。

上から見下ろすとかなり高い所まで登っているのがわかる。本来辺りが一望できるのだがこの日は霧の為視界は悪い。下って今度は別のうどん屋に入ってみる。ここではぶっかけという方法で食べてみる。正直この店はイマイチだった。ほんと店によって違うものだと思った。名店にも行ってみたかったものだ。
雨降りの為駅構内で雨宿りをして午後のルートを考える。事前の予定では徳島に行き鳴門海峡の大渦を見ようかと思っていたが。雨も強くなってきたし、ここまで来た分の時間を考えるとかなりかかってしまう。予定を変更して高速を使い、高知県の桂浜に向かう事にする。
雨装備を済ませ、高速入り口に向かう。雨天時にバイクに乗る事が少ないので不安になる。高速では80キロくらいでのんびり走る。雨なので憂鬱だ。このまま一日中雨だったら嫌だな。桂浜には坂本竜馬の像などがありそこを観光するにも雨だとどこか楽しめない気になり、気持ちが落ち込んだまま高速走行を続けていた。ばば様の祈りは通じんかったか。
出発前夜俺は東京ディズニーランドをこよなく愛する女と酒を飲んでいた。明日から四国に行こうと思っているが天気がよくなさそうなので少し迷っている事を告げると、東京ディズニーランドをこよなく愛する女はこう言った。「私のおばあちゃんは凄い晴れ女なので、きっと大丈夫。おばあちゃんもその日は大事な用事があって晴れて欲しいと思ってるから、そのパワーが四国まで通じますヨ

」
こいつバカかと思いつつも、その言葉に後押しされて俺は現在雨降りの四国の高速道路を走っているバカだ。
そんな事を考えながら、徳島自動車道からJCTを経由して高知自動車道をのんびりと走る。相変わらず雨は降り続いている。長いトンネルをいくつか通り抜け、あるトンネルの出る時の事だった。出口が明るいのだ。晴れている。昨夜から現在までにかけて全く見ていない太陽が目の前に現れた。思わず叫んだ。数分興奮状態が続いていた。路面も濡れている様子はなく。スロットルを捻りこんだ。感極まった。涙が出た。泣いたのなんていつぶりだろうか。しかもこんな初めて通る高速道路の上で合羽のフードまで被さったヘルメットの中、声をあげて泣いたのだ。心の底から東京ディズニーランドをこよなく愛する女とそのばば様に感謝をした。

これも雨の中を走行していたからこその感動なのだと思った。自然の影響を直かに受けるバイクならではの感動。もし雨が降らなかったら太陽を見て涙する事もないわけだから。恐るべし四国初日からやってくれる。
その後17時頃高知桂浜に到着する。ここでは坂本龍馬像とその視線の先にある太平洋が目的だ。

土佐風味に溢れすぎだ。

駐輪場にバイクを停めて桂浜まで歩いて行く。程なくして竜馬像がある。その視線の先には太平洋。この海の迫力は凄かった。見渡す限りの水平線で、高く荒い波が押し寄せてくる。音からして違う。

確かにこの波を見ていると、列強各国の脅威を感じる気がしてきた。ここは四国に行く際は必ず行くべきだ。

浜辺ではよさこいソーラン節の稽古をしている地元の若者。とても熱が入っていて見入ってしまった。
そこから日も暮れてきたので高知市内で宿を探す事にした。幸い安そうなホテルがあったのでバイクが停めれるか確認してから19時半チェックイン。一日の疲れがどっと出た。一日中殆ど乗りっぱなしなので流石に疲れる。一休みしてから高知の街に繰り出す。来たからには土地の食べ物を食べなければ。ホテルにあった地元のFPで飯どころを探す。たまたま入った郷土料理屋はとても落ち着く所で、女将さん達もとてもきさくで話していて面白い。そこでは、カツオのたたき、ウツボ、チャンバラ貝等の高知ならではの食べ物をいただいた。そして楽しみな地酒。隣に座っていた大阪から仕事で来たお医者さんとも話し楽しい夜だった。皆口を揃えて言うのは、バイクで旅行か、青春だね、と。うん悪くない。高知の夜も程々に早目に寝る事にする。昨日は寝てないし。明日は今日以上に走る事になるからだ。
3月15日(土)午前6時目覚ましは8時にセットしていたが、目が覚めたので起きる事にした。まだ夜明け前だ。相変わらずの缶コーヒーとタバコ。窓を開けてTVニュースをぼんやり見る。暫くすると朝日が見えてきた。高知県で見る朝日、感慨深い。思えば遠くへ来たもんだ。自分の日常とかけ離れた場所にいる実感。何もかもが新鮮味に溢れている。午前7時、出発。さあ今日は長いぞ。

今日は高知から四国最南端の岬、足摺岬を目指す。そこから四万十川へ行き、更に四国カルストを経由して松山に戻り、道後温泉に行く予定だ。最後の夜は道後温泉に行くつもりだったので宿はとってある。
太平洋側の海岸線に沿って走る。昨日と違い気持ちよい青空の為、とても気持ちがよい。四国の国道は全て有料道路のようで信号も少なく。ストレスなく走れる。歩行者信号も殆ど押しボタン式の為、スムーズだ。途中、標高の高い道を通ったり、カーブの続く道があったりで、ジェットコースターのような感覚。四国に住んでると確実に運転技術が向上するだろう。
12時半足摺岬に到着した。本当に四国旅行は時間がかかる。

途中、ちょっと神秘的な場所がある。

足摺岬灯台、高台にあるので打ち付けられる波しぶきが凄い。

ここからは最南端だけに270度くらいの水平線をながめる事ができる。本当に水平線以外何も無いので絶景だった。昔はここからハワイが見えたなんて話もあるぐらい。世界は広いというけれど、俺には日本も十分広い。まだ見ぬ光景なんて山ほどあるのだ。
足摺岬を後にし四万十川に向かう。あまり夜間走行をしたくないので目的地ではあまりゆっくりできない、しょうがないところだが。

途中、なかなかの風景のよい所。サニーロードにて。
1時間程走り四万十川に到着。日本最後の清流四万十川、それはあまりにも雄大だった。

その川は広く長い。そして澄んでいる。川のせせらぎと風と木々のゆらめき、鳥の鳴き声全てが混ざり合って、絶妙な雰囲気をかもし出している。

沈下橋と呼ばれる車も通る生活道路。平面になっているのは川が増水した時に流されないよう。数箇所かかっていてそれぞれ呼び名がある。

シンメトリー
四万十川を堪能し、松山へ向かうのに、四国カルストを通ってみようと考え、バイクを走らせる。いま思えばこれが大きな過ちだったのだ。
四万十川沿いに細い道を地図に従いのんびり走る。自然の中を走るのは気持ちがよい。上流に行くに従って川の色も益々神秘的になってくる。かなりの時間が過ぎた、もうすぐ夕方だが一向にカルストらしき景色は見えない。地図を確認しながら進むと四国カルストにやっと着きそこから地図どおり進む。その先に待っていたのは。
雪
地図を平面でしか見てなかった俺は標高1500mの所に来てしまったのだ。除雪作業は行われているが道沿いにはまだ融けていない雪が1メートルくらいになっている。しかも少し融けた雪が路面を濡らしている。更にここからは峠道の下り。
命の覚悟をした。本当に死ぬかもしれないと思った。慎重な運転をし、山、いや岳から下っていく。日も暮れそうで焦っている。周りは凄い景色なのだが眺める余裕も写真を撮る余裕なんてない。下手をすれば凍死だ。今の心境は負、負、負。3月の高知に来て積雪を見る羽目になるとは、四国恐るべし。四国もはや死國。
かろうじてある程度下り、松山へ通じる国道へ出た。この時点でもう日は落ちている。ここは久万高原。スキー場がある場所で、寒い。完全に冷え切った体で逃げるように松山へ向かう。
四万十川を出て5時間半。愛媛県松山市街到着。予約していたホテルに着いたのは21時だった。過酷。
冷えた体を温めるため道後温泉に向かう。道後温泉までは路面電車で行った。道後温泉付近は近所の旅館、ホテルの浴衣を着た観光客で一杯だった。

電車を降りて歩いて程なくしてある道後温泉本館。中には皇室専用の風呂もあるらしい。
早速風呂につかる。湯の温度が熱いという事で有名だが、自分は雪山帰りの為か丁度よい湯加減だった。この2日間の疲れがとれる、温泉は素晴らしい。流石に1日の8割は運転しているのでクラッチを握る左手がかなり痛かった。今回の旅の最後の夜に道後温泉を選んだのは正解だった。明日、最終日は帰るだけなので今夜はゆっくりできるのだ。
道後温泉から松山市街地に戻り、またFPで食事所を探す。再び郷土料理が食べれそうな所へ。その店は地下にあり、カウンターと何席かの座敷がある。店の雰囲気から最初はしまったと思っていたが、おやじさんと話しているうちにどんどん話が盛り上がってきた。おやじさんも元バイク乗りでモトクロスしていたとか、マッハ250に乗ってたとかバイク話で盛り上がる。隣にいた渋めのお客さんも以前XSに乗ってたらしく、面白い話も聞けた。ここでは地元牛の牛刺し、岬アジ等をいただいた。岬アジは大分の関アジと同じ漁場で獲れるらしくそちらよりも値段が安くてお勧めとの事。後はやはり地酒をいただきこの日は明日の事は考えず呑む。俺が今日通った道はやはり地元の人は通らないらしく、よく来れたねなんて言われつつとても楽しい時間だった。丁寧に帰りのフェリー乗り場までの地図も書いてもらい、とても親切な方たちだった。
そうこうして松山の夜は更けていく、酔っ払った俺は四国最後の夜を悔いなく床に着いたのであった。
3月16日(日) 午前9時いつもより遅く起床。ゆっくり寝れたが昨夜の酒が残り、目覚めは悪い。遂に最後の日がやってきた。振り返れば色んな事があっという間だったように思う。最後は帰り道だが気を抜かずに無事に家に帰るのだ。

最終日は松山から海沿いを通って大分行きフェリー乗り場のある佐多岬半島へ。フェリーは佐多岬の入り口辺りの八幡浜港と佐多岬の突き当たりにある三崎港の2箇所出ていて。今回は佐多岬半島メロディーラインを抜けて三崎港から大分に入る事にした。
松山からは相変わらずの広い道路だが、日曜という事もあり交通量は多い。途中から海沿いの道に入り、四国西部の海岸線を楽しむ。途中菜の花が咲いていたり綺麗な風景が多かった。佐多岬半島に入るのに約1時間弱そこから標高の高いメロディーラインを進む。

途中の風力発電所にて。
とても気持ちのよい道で楽しめる。四国は本当に道に恵まれている。おかげでもし次回くる機会があればどの道を選ぶかが大変だ。のんびり走り休憩しながら走り午後1時半に三崎港フェリー乗り場に到着。乗船手続きを済ませる。少しの待ち時間で近くの定食屋へハマチの刺身定食、じゃこ天をいただく。四国での最後の食事をすませ俺は大分行きのフェリーに乗り込んだ。
来る時とは違い、もうフェリーには慣れていた

今回の旅はとても楽しかった、とてもしんどかった、とても怖かった。帰ってきて今思える事は行ってきて本当によかった。
またいつか、こんな旅してみたいと思います。長文見てくれてありがとう。